社長にボーナスを払ったらダメなの?

コイン

ダメではないけれど・・・

札幌市東区の税理士が執筆する「簡易顧問Blog」。
今回のテーマは、「社長にボーナスを払ったらダメなの?」です。

社長へのボーナスは、きちんと届出をして支給しなければ、不利益が生じます。

あくまでも法人税法の話ですから、届出をしないで支給したとしても、法律違反ではありません。

でも、不利益が生じるのであれば、きちんと届出をすべきですよね。

でも、このボーナスはとってもリスキーなんです。

個人的には社長にボーナスを支給するのであれば、その分を定期同額給与に含めて支給したほうがいいと考えています。

今回は、きちんと届出をして支給するボーナス(事前確定届出給与)について、制度の概要、この制度を利用することのデメリット(リスク)を中心に解説していきます。

定期同額給与については、下記の記事「社長の給料は変更できない?」をご参考にしてください。

[sc_blogcard url="https://aoiro459.com/guarantee-change/"]

なお、タイトルは「社長にボーナス・・」としていますが、正確には社長だけではなく、役員全員が同じ取り扱いになります。

便宜上、以下の解説についても「社長」と記しますが、誤解のないようにお願いいたします。

法人税法でのきまり

法人税法では、会社が社長(役員)に対して支給する給与で、次のもの以外は損金の額に算入されません。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

1の定期同額給与については、「社長の給料は変更できない?」の記事で解説しておりますので、ご確認ください。

社長に対するボーナスに該当するのが、23です。

ただし、3については、一般的な小さな会社では支給することができません。

2については、一定の要件を満たせば、小さな会社でも支給することができます。

事前確定届出給与

それでは、事前確定届出給与について解説していきます。

制度の趣旨

事前確定届出給与は、平成18年度税制改によって設けられた制度です。

それまでは、役員に対する賞与は利益処分項目として取り扱われていました。
その後、会社法で、役員に対する賞与は「職務執行の対価」と明確に定義されました。

それに伴って、法人税法でも一定の要件を満たせば経費(損金)として認められることになりました。

届出用紙の入手と記載事項

社長にボーナスを支給するためには、事前に届出をする必要があります。
事前確定届出給与というくらいですからね。

届出書と付表を一緒に提出します。
届出書の用紙は、国税庁のサイトから入手できます。
もちろん、税務署でももらえますが、ダウンロードしたほうが早いですね。

URLは、こちらです。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/5104.htm

届出書には、次の事項を記載します。

  • 事前確定届出給与を支給することを決議した年月日と決議機関(株主総会等)
  • 事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日
  • 定期同額給与ではなく事前確定届出給与を支給することとする理由と支給時期をその時期とした理由

付表には、 次の事項を記載します。

  • 誰に、いつ、いくら支給するのか
  • 定期同額給与の支給年月日と支給額

いつまでに提出すればよいか

この届出書は、次のうちどちらか早い日までに提出しなければなりません。

  • 事前確定届出給与を支給することを決議の日から1月を経過する日
  • 会計期間開始の日から4月を経過する日

例)事業年度が4月~3月の会社で、事前確定届出給与を支給することを決議した株主総会等を開催した日が5月20日の場合

  • 決議の日から1月を経過する日 ⇒ 6月20日
  • 会計期間開始の日から4月を経過する日 ⇒ 7月31日

ですから、1の6月20日が提出期限となります。

決算承認のための定時株主総会の際に併せて事前確定届出給与の支給を決議することが一般的だと思われますので、提出期限は1の期日になることが多いでしょう。

厳格な要件

事前確定届出給与は、厳格な要件が求められています。

届け出た事項を完璧に守らないと、そのボーナスは法人税法では経費にならないのです。

つまり、届出書(付表)に記載した支給日に、記載した金額を1円違わず支給することが絶対要件になります。

「届出書には100万円と書いたけど、利益が出そうだから200万円支給しよう」とか「赤字になりそだから50万円に減らそう」というのは、1円も経費になりません。

事前確定届出給与を利用して利益操作をすることを防止するために、このように厳しい要件が求められているのです。

事前確定届出給与のメリット

事前確定届出給与 のメリットとしては、次のものが考えられます。

  • 社長のモチベーションアップ
  • 社会保険料の削減

前者については、個人の考え方次第ですね。

もらえる金額の総額が同じであれば、毎月の給与でもらえばいいと考える人もいますから、メリットとは感じない人もいると思います。

後者については、場合によってはメリットとなり得るのかもしれません。
以下、簡単に、概要を説明します。

ボーナスに係る社会保険料を計算する際には、社会保険料の標準賞与額に上限があります。
この上限があるという点に着目し、社会保険を削減するスキームがあるようです。

このスキームは、月給を極端に低くし、その分ボーナスを高くするという方法が採られるようです。

しかし、このスキームには様々なリスクがありますので、お勧めできません。

事前確定届出給与のデメリット

事前確定届出給与は、メリットもあるのですが、それ以上にデメリット(リスク)があると私は考えています。

もし事前確定届出給与の支給をするのであれば、その運用は慎重に行う必要があります。

社会保険の面からのデメリット(リスク)

事前確定届出給与を利用して社会保険料削減しようとするのには、次のようなデメリット(リスク)があります。

年金事務所が賞与と認めない可能性

標準賞与額の上限(年金が150万円、健康保険が年間573万円)を利用して保険料を削減しようとすると、賞与の比率を極端に上げる必要があります。

年収を720万円と仮定して、これを「月給60万円として支給した場合」と「月給10万円・賞与を600万円とした場合」の社会保険料(北海道の場合)をシミュレーションすると、後者の方が約40万円負担額が低い結果となりました。

しかし、年収720万円の人の生活を考えると、月給10万円で生活できるでしょうか?

生活費が足りなくて賞与分を会社から前借するようであれば、年金事務所から「その前借分は給与を支給しているのと同じ」と認定されて、その金額に応じた社会保険料を徴収される可能性が高いのです。

将来もらう年金の額が低くなる

上記のシミュレーションで削減された社会保険料は、ほとんどが年金掛金部分です。
つまり、年金の掛金が少なくなったということです。

掛金が少なくなれば、将来もらう年金が少なくなります。

給与の支給方法が違うだけで同じ年収の人よりも年金の額が少なくなるのでは、負担する掛金が減ったからといって手放しに喜べることではありません。

税金面での デメリット(リスク)

税金の面からも デメリット(リスク) があります。

退職金適正額の算定の際に不利に

役員退職金の適正額を計算する際には、功績倍率法(最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率)がよく使われます。

算式の「最終報酬月額」には、ボーナス分は含まれません。

ということは、月給を極端に下げていると、いざ退職金を支給する際の適正額が極端に低くなってしまう可能性があるのです。

退職金なんて先のことと思うかもしれませんが、突然の事故や病気によってリタイヤせざるを得ないことだってありますからね。

支払遅延の場合はワンツーパンチ課税

届出書を出したものの、一時的に資金繰りが悪化して支給予定日に支給できないという状況が出てくるかもしれません。

その場合は、どのような取り扱いになるのかをみていきます。

支給日を過ぎて、支給した場合
  • 会社は、届出どおりに支給しなかったので、法人税法では経費になりません。
  • 支給を受ける社長のほうは、所得税等が課税されます。
支給日を過ぎて、支給しなかった場合
  • 会社は、一定の要件を満たさない場合は、支給予定額と同額の「債務免除益」という収益を計上する必要が生じます。
  • 支給を受ける社長のほうは、所得税等が課税されます。

「もらわなければ所得税は課税されないだろう」とお考えになるかもしれません。

しかし、支給日が過ぎてしまったら、その後に辞退しても課税されてしまいます。
なぜなら、いったん支給されて、それを会社に寄付したのと同じことだとされてしまうからです。

その他

支給できない場合で、次のときは、債務免除益は計上しなくてもいいという規定があります。

  • 支給できない理由が会社の整理、事業の再建及び業況不振にあるとき
  • 取締役会等によって一定の基準によって支給しない額を決議したとき


ただし、この場合であっても、支給日が到来する前に辞退しないと、役員個人には所得税等か課税されてしまいます。

以上のように、届け出たとおりに支給しない場合は、法人と個人の両方に課税されるワンツーパンチ課税となってしまいます。

天変地異が起ころうが、事故にあおうが、届け出た支給日に支給する必要があるのです。
個人的には、事前確定届出給与は非常にリスクが高いと考えております。

特に、小さな会社の場合は社長といえども、年収が何千万円ということは少ないでしょう。

そのため、事前確定届出給与で社会保険料を削減しようとすると、かなりバランスを欠いた支給形態になってしまいます。

バランスを欠くと、やはり、どこかに歪が生じるものです。

やはり、定期同額給与として支給することがベターだと思います。

どうしても社長にボーナス(事前確定届出給与)を払いたいのであれば、それ相当の覚悟と緻密な管理が必要です。

まとめ

社長にボーナスを払ったらダメなの?

  • 事前確定届出給与という制度を利用すればボーナスは支給できる
  • ただし、厳格な要件が求められる
  • 社会保険料削減のスキームはリスキー
  • ボーナスではなく、毎月の給与(定期同額給与)に均して支給するのがベター