社長の給料は変更できない?

チェンジ

法律違反ではないけれど・・・

札幌市東区の税理士が執筆する「簡易顧問Blog」。
今回のテーマは、「社長の給料は変更できない?」です。

社長の給与は、事業年度の途中で変更すると不利益が生じます。
あくまでも法人税法の話ですから、変更すること自体は法律違反ではありません。

でも、不利益が生じるのであれば、あえて変更する意味はないですよね。

今回の投稿では、法人税法上、社長の給与についての考え方、変更が許される場合、事業年度の中途で変更した場合の不利益、などについて解説します。

なお、タイトルは「社長の給料」としていますが、正確には社長だけではなく、役員全員が同じ取り扱いになります。
便宜上、以下の解説についても「社長の給料」と記しますが、誤解のないようにお願いいたします。

法人税法では社長の給料をこう考えている!

まず、社長の給料について、法人税法はどのように考えているのかをみていきましょう。

役員給与の損金不算入

法人税法では、会社が社長(役員)に対して支給する給与で、限定列挙されたものに該当しないものは、損金の額に算入しないという旨の規定があります。

その限定列挙されたものとして、大きく次の3つのものがあります。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

つまり、実際に社長に払った給与でも、これらに該当しないものは、法人税法では経費にならないということです。

なお、一般的な小さな会社は、3については、支給することができません。

よって、小さな会社の社長の給料は、実質的には、1の定期同額給与か、2の事前確定届出給与に該当しないものは法人税法では経費に認められないということになります。

今回は、1の定期同額給与について、みていきます。

不相当に高額な部分の損金不算入

では、上記に列挙したものであれば金額はいくら支給してもよいのでしょうか。

法人税法では、社長(役員)に支給する給料のうち、不相当に高額な部分の金額については、損金の額に算入しないと規定しています。

なお、不相当に高額な部分の金額の具体的な金額については明確に定められておらず、裁判で争われることもあります。
ただし、小さな会社の場合については、裁判になるような高額な給料を支給するケースが少ないと思われますので、あまり心配する必要はありません。

とはいっても、例えば、社長の配偶者が役員になっていたとして、職務内容が事務所の掃除程度なのに100万円の給料を支給しているなどの場合は、「不相当」とされる場合があります。
「家族以外の従業員に対しても、この金額は払うよね」っという常識の範囲内の金額であれば、問題になることはないと思われます。

定期同額給与とは

社長の給料は、定期同額給与というものに該当して、その金額が不相当に高額でなければ、法人税法上の経費にしてOKということですが、定期同額給与とはどのようなものをいうのでしょうか。

文字から想像できると思いますが、定期同額給与とは、平易な言葉でいえば、定期的に支給される給料(月給)で同額であるものを指します。

裏を返せば、途中で金額を変更した給料は、経費になりませんよということです。

変更が認められる場合(通常の役員報酬改定)

さて、金額を変更した場合は経費にならないという規定ですが、一切変更できないということでは困りますよね。

業績が上向いてきたし、社長の給与をアップしたいとか、反対に、業績不振だから社長の給与を減らして赤字を避けたいということがあると思います。

安心してください。法人税法も鬼ではありませんので、一定の場合には変更が認めらます。

まず、一般的なものとしては、通常の役員報酬改定です。
期首から3カ月以内にされる改訂であれば、定期同額給与として認めらます。

例えば、4月~3月という事業年度の会社であれば、社長の給与を変更するタイミングは、6月分からというのが一般的となります。
というのは、決算月から2カ月以内に株主総会を開き、決算の内容を承認、役員報酬改定の決議が行われるからです。


そのため、下図の様な改定はOKです。

変更が認められる場合

もちろん、法人税法では 期首から3カ月以内にされる改訂であればいいという旨が定められているので、臨時株主総会を開くなどして、期首から役員報酬を改定することを決議することも差し支えありません。

変更が認められる場合(やむを得ない事由の発生)

次に、変更が認められる場合として、やむを得ない事由が発生した場合が挙げられます。
具体的には、役員の職務内容が大幅に変更になった、経営状況が著しく悪化した等によって給与の額を変更せざるを得ないような事由が発生した場合です。

職務内容の大幅な変更とは、例えば、社長が後継者に地位を譲って非常勤の会長職に退く場合などが該当します。

また、経営状況が著しく悪化した場合というのは、単に前年比でこれぐらい悪化したなどのことではありません。
例えば、銀行に借入金の返済条件を変更してもらう際に社長の給料の減額が条件とされるなど、第三者である利害関係者との関係上、どうしても減額せざるを得ない事情が生じていることが求められます。

なお、コロナ禍における業績悪化によって役員給与を減額せざるを得ないときは、変更が認められる場合に該当することが多いと思われます。

いずれにしても、改定が認められるやむを得ない事由が発生していると認められない場合は、後述のような不利益が生じます。
税理士などに相談のうえ、慎重に判断することをオススメします。

変更が認められない場合の不利益

上述の「変更が認められる場合」に該当しないのに事業年度の途中で社長の給料を変更してしまった場合には、次のような不利益が生じます

法人税法では経費とならない部分が生じる

まず、給料をアップした場合についてみていきましょう。

4 月~3月という事業年度の会社で、10月から社長の給料をアップしたとします。
この場合は、そのアップした金額部分が経費として認められません。
つまり、期首から期末までの期間をとおして当初の金額が社長の給料だったとされてしまうのです。

下図の、赤色線よりも上にはみ出た部分が経費にならないということになります。
(80と50の差額の6カ月分、30×6=180が経費になりません。)

給料アップの場合

反対に、10月から社長の給料をダウンしたとした場合はどうでしょうか。
この場合は、ちょっと考え方が難しくなります。

4月と5月分については、前年度の定時株主総会で決議されたものなので、これについては、定期同額と認められます。
6月から9月までの期間は、減額後の金額が社長の給料だったとされてしまいます。

下図の赤枠の部分が経費にならないということになります。
(80と50の差額の4カ月分、30×4=120が経費になりません)

給料ダウンの場合

ワンツーパンチ課税は避けたい

上では、事業年度の途中で社長の給料を変更した場合は、一定の額が会社の経費としては認められないことを説明しました。
給料ダウンの場合は、赤字を避けるためという事情による場合が多いでしょうから、経費として認められないことは許容範囲かもしれません。

しかし、もうひとつの不利益があることをおぼえておいてください。

会社の経費にならないとされる部分について、社長の側(給料をもらった側)にとっては、給料収入があるのですが、当然、所得税や住民税が課税されます。
経費にならないのであれば、会社のその分を返すから所得税等を課税しないでほしいといっても、その理屈は通りません。

会社が赤字の場合は別ですが、社長の給料で経費にならない部分は当然法人税等の課税の対象になりますし、もらった社長は所得税等の課税の対象となるのです。
つまりは、ダブルで課税されるということです。


私は、これをワンツーパンチ課税と称していますが、これをくらってしまうとダメージが大きいです。

なぜこの規定があるのか

社長のなかには、「自分の会社で自分が稼いだお金なのに、自由に給料を変更できないのはなんでだ!」と思う方がいらっしゃるかもしれません。
たしかに、そいうお気持ちは理解できる部分があります。

しかし、それを自由に認めてしまうと、どういうことが起こるでしょうか。

  • 業績が予想よりも良い場合は、法人税を避けるために経費を増やしたいので、役員の給料をアップしよう。
  • アップしたはいいけど、資金繰りが厳しくなってしまったので全額もらえない。
  • もらえないのに所得税がかかるのはイヤだから、やっぱり役員の給料を下げよう。

こういったことが自由に行われてしまう可能性があります。

社長の給料変更を自由に認めてしまうと、法人税と所得税の税率の差を使って税金を回避する行為が行われてしまうのです。

まとめ

社長(役員)の給料は変更できない?

  • 基本的には、通常の役員報酬改定時期以外は変更しないほうがよい
  • やむを得ない事情がある場合は変更できるが、その判断は慎重にしたほうがよい
  • ヘタをすると、ワンツーパンチ課税という手痛い目にあう
  • このお話は、社長だけではなく役員全員にあてはまります